固形墨について

概要

 学校の習字の時間、墨汁を持ってくるのを忘れてしまい、大慌てで墨の塊をこすって墨を作ろうとした経験はありませんか?固形墨は液体墨の代用品ではありません。液体墨にはない奥深い味をしっかりと持っています。ここではそんな固形墨の特徴や取り扱う際に気を付けることなどを紹介します。

固形墨

固形墨の特徴

 固形墨とは文字通り固体状になった墨のことを指します。硯の中に水を入れ、時間をかけてゆっくりと磨ることによって液体の墨になります。

 固形墨は硯で磨って墨を作るため、主成分であるすすの粒子が不揃いになりやすく、液体墨に比べて深みや奥行きのある色を出すことができます。さらに使用する硯を変えたり、墨を磨る際に力加減を調節したりすることで、墨の濃さや色調を変えることができます。用途や自分の好みに合わせた墨を磨ることができます。また、お手入れ方法さえ間違えなければ固形のままで長期保存が可能である点もメリットです。

 固形墨は液体墨よりも値が張ります。上質な素材を使って作られた墨はとても高価です。時間や値段をかけてでも良い墨を使いたいという方は、ぜひ固形墨に挑戦してみてください。(墨の磨り方は「墨を磨ってみよう」にて)

固形墨を使う際に注意すること

 固形墨は一から墨を作ることになるので、使用できる状態になるまで時間がかかります。また、固形墨は煤やにかわといった天然の素材のみでできているため、防腐剤や乾燥剤などの成分のある薬品は入っていません。そのため一度磨ってしまうと保存が利かず、時間が経てば腐ったり固まったりしてしまいます。磨った墨はなるべくその日のうちに使い切りましょう

 膠は18度以下になると固まる性質を持ちます。冬の寒い日には墨が固まってしまいますので固形墨は不向きです。逆に夏場の暑い時期は温度や湿度によって墨が柔らかくなってしまうことがあります。取り扱いには気を付けてください。

固形墨の保存方法

 固形墨は日々の気候によって絶えず変化します。そのため気温の変化が激しいところや湿気の多いところ、直射日光が苦手です。墨が割れてしまったり膠が腐ってしまったりします。桐でできた箱の中で保管するのが最も理想的ですが、難しい方は購入時に入っていた紙の箱に入れて、湿気の少ない引き出しやタンスの中にしまいましょう。