硯の選び方 素材で選ぶ!

目次
玄昌石

硯の材料

 基本的に硯の材料は天然石です。大きな岩から削り取った石が職人の手で彫られることによって硯の形となります。天然の素材となるので全く同じものを作ることができません。

 近年ではプラスチックやセラミックで作られた硯も誕生しています。学童用の書道道具で見かける硯のほとんどはプラスチック製だと思います。

 他にも陶器で作られたものや、漆器、瓦で作られた硯もあります。これらの硯は実用的というより、どちらかというと観賞用の硯である場合が多いようです。

材料による硯の違い

天然石

 天然石を彫って作られた硯は墨を磨るのに適しています。鋒鋩ほうぼうというやすりの部分は天然石を削らなければできません。天然石は産地によって色合いや模様などの違いが出てきます。日本にもいくつか硯の名産地があるので違いを見てみると面白いかもしれません。(詳しい石の産地については「素材の産地で選ぶ!」を参照)

 天然石でできた硯は、石をそのまま使っているだけあって非常に重たいです。持ち運びには不向きですし、乱暴な使い方をすれば割れてしまいます。また、上質な硯はどうしても高値になってしまいがちです。

 書道をするなら固形墨以外は使わないという人は勿論、普段は墨汁を使っているけれどいつか固形墨を磨ってみたい、という方も天然石の硯を使いましょう。

プラスチック・セラミック

 一方でプラスチックやセラミックの硯は墨を磨ることにあまり適していません。中には磨りやすいように研磨剤が混ざっているものもあるようですが、やはり天然素材で作られた硯と比べると劣ってしまいます。

 固形墨でなく墨汁を使う際には問題なく使えます。中には固形墨用の面と液体墨用の面と、裏と表で使い分けることができるものもあります。基本的に表の陸の部分が広い面は固形墨用、裏の海の部分が広い面は液体墨用となっていますが、使いやすい方の面を選びましょう。どちらかと言えば液体墨でも表面を使用する方がおすすめです

 また、石でできた硯よりもはるかに軽いので持ち運びがしやすく便利です。落としても簡単に割れたりひびが入ったりすることもありません。これらの点が学童用の書道道具に採用されている理由でもあります。

どの材料の硯を選ぶと良いか

 石製の硯が硯本来の機能を目的に作られたものだとすれば、プラスチック製、セラミック製の硯は利便性やコストダウンを目指して作られたものだということがわかります。

 墨は固形墨しか使わない、という人には天然石から作られた硯を使いましょう。固形墨を使いたいと考えている方は書道に対する情熱やこだわりは強いと思いますので、是非硯にもこだわってもらいたいところです。良い墨を求めるのであれば、もちろん良い硯を用意しましょう。

 固形墨を使う予定が全くない人、手軽に書道を楽しみたい人にはプラスチック製、あるいはセラミック製の硯を使っても構いません。