液体墨について

概要

 おそらくほとんどの方は「墨」と言われると黒いボトルに入った液体状の物=墨汁を想像することと思います。実はこの液体状の墨は近代になってから発明されたもので、その利便性からいつの間にか固形墨よりも主流となりました。ここでは意外と知られていない液体墨の特徴を紹介します。

液体墨

液体墨の特徴

 液体墨は墨汁や墨液とも言い、既に液体状になっている墨のことを言います。液体墨は、固形墨を磨った後の墨の状態なので硯に出せばすぐに使用することができます。固形墨は少量の墨を得るのにかなりの時間を要する一方で、液体墨は一度に大量の墨を得ることができます。これは非常に大きなメリットです。液体墨は一定の色の濃さを保ち続けることができます。メーカーによっては濃さの異なる液体墨も売られているので、様々な濃さの墨を持っていれば表現に合わせて使い分けることができます。固形墨に比べると安価で手に入りやすいのもまた利点です。

液体墨に含まれている成分について

 液体墨にはすすにかわを用いて作られたものと、膠の代わりに合成樹脂を用いて作られたものの二種類があります。主成分こそ固形墨と同じですが、後者のように製造過程で大量の塩や化学薬品の防腐剤を入れているものがほとんどです。そのため腐ったり固まったりしてしまうことなく液体のまま長期保存することができます。膠を使用したものだと2年ほど、合成樹脂を使用した物だと5年ほど保存が可能です

液体墨を用いるデメリット

 墨汁の長期保存のために使われている薬品は、どれも天然素材から作られている筆を痛めてしまいます。そのため、液体墨を使い続けている筆は持ちが悪くなる恐れがあります。他にも液体墨は滲みやすく、滲むと表面に黒い斑点がついてしまって見栄えが悪くなってしまいます。墨の濃さが一定であるという点も裏を返せば墨の色に変化が起こらず、平面的な表現になってしまいがちです。

 いくつか欠点を挙げましたが、やはりすぐに使うことができるという点は、すべての欠点を帳消しにすることができるほど非常に大きな利点です。今すぐ字を書きたいという時には重宝しますし、練習用として使うのなら液体墨で十分です。