臨書の大切さと種類~形臨・意臨・背臨~

目次
「蘭亭序」王羲之

臨書とは?

 臨書とは、お手本を見ながら書くことです。お手本とは基本的に古典作品を指します。臨書には形臨意臨背臨の三種類があります。

形臨

 形臨では技術面の習得を目的とします。そのため、字の形を真似することに重点を置いて書きます。自分の個性を出すことはせずに、お手本に忠実な字形や用筆法を模倣して書きます。学校の習字の時間に行うのも形臨の一種です。

意臨

 意臨はお手本を書いた作者の意図や気持ちを汲み取ることを目的とします。お手本が古典である場合はその作品が生まれた時代背景や作者の来歴なども考慮し、作者の精神までも模倣して書きます。つまり、作者の気持ちになって作品を書きます。

背臨

 背臨はお手本の書風を自分のものとして取り込んでいくことを目的とします。お手本を見て記憶した後、お手本を見ないで記憶通りに書きます。背臨は暗書(あんしょ)と呼ばれることもあります。

 臨書に対して、お手本を参考にしないで自分で創意工夫して書くことを自運(じうん)といいます。

 温故知新、芸術や学問では過去の研究から学ぶことが大事です。書道にとって、この過去から学ぶという行為が臨書に当たります。臨書では古の書家が書いた作品に触れ、その作品を真似て書くことでその作品の本質を感じ取ります。ただお手本を書き写すだけではなく、そこにある言葉や筆者の意思を体感しなければなりません。

 ちなみに、作品を書き上げた後は名前を入れますが、臨書の場合は名前の後に「臨」という文字を入れます。

古典を臨書することの大切さ

 昔の人が書いたものを書き写して何の意味があるのか、初心者がやるべきもので上級者はやらないものだ、などと考える方もいるかもしれません。書道は臨書に始まり、臨書に終わるといっても過言ではありません。個性むき出しに自由な作品を書く書道の上級者でも、自分の個性を客観的に見るために臨書を行います。

 ここで、臨書をすることの大切さ、臨書の意義について確認しましょう。

テクニックを学ぶ

 まず、何といっても書家のテクニックを学ぶことができるという点です。お手本をじっくりと眺めてみると、作者の特徴やクセは結構分かるものです。そこから、どのように書けばどういった効果を与えることができるのかということを学び取ります。書道で最も大切なことは客観的な観察眼です。その観察眼を臨書では鍛えることができます。

自分の好きな作品に出会える

 次に、自分の好きな作品に出合うことができるという点です。様々な古典作品と触れ合ううちに、自分の書に対する好みが明らかになっていきます。自分の好きな書風の作品を探し始めることができます。自分の個性を出すためには自分の好きなもの、しいては自分を知る必要があります。
基本的にはご自身がいいなと思った古典を用いて臨書することが望ましいですが、こちらのページでいくつかの人気のある古典をご紹介しておりますので、併せてご覧ください。

自分の書風を身に着ける

 そして最後に、これが非常に重要ですが、臨書をして学んだことを自分に還元し、独自の書風を身に着けることができるという点です。先人たちの作風に自分の個性を融合させることで、独自の書風を作り出すことができます。これこそが書道の真髄であり、お手本に通りにきれいに整った字を書く習字との違いです。

 このように、臨書をやる意義は大いにあるのです。臨書から学んだことが目に見えて現れるようになるには時間がかかりますが、必ず創作の幅が広がります。自分は好きなように書きたい、もっとオリジナリティを出したい!という方も臨書を通してオリジナリティとは何かを学び取ってください。