臨書のポイントとおすすめの古典作品

目次

臨書のポイント

 ここでは、字の形を真似して書くという形臨を基本として臨書のポイントを紹介します。なお、臨書について詳しく知りたい方は「臨書の大切さと種類~形臨・意臨・背臨~」を先にご覧ください。

お手本を見る

 まずはお手本を眺めて観察しましょう。ただ見るだけではだめです。まずは全体を見て形だけを観察します。
それから筆の入れ方(始筆部分)や終わり方(終筆部分)、線の強弱や抑揚、文字の中に余白はどのくらいあるのか、線が右上がりなのか水平なのか、文字全体の形(シルエット)はどのような形をしているのかなど 細かいところまでじっくりと観察します。
すると、筆順や筆の動きが必然的に見えてくるはずです。さらに注意深く見ていけば、作者のクセが見えてきます。どこにどのような癖があるかなどを探しましょう。

背臨では…

 背臨ではお手本を見て書くことができないので、この時点でいかに作品を観察して記憶しておくかが重要です。

お手本を読む

 臨書では、そこに何と書かれているのか知ることが大切です。書かれている文字の意味も分からないままに臨書をしても、それはただの書き写しになってしまいます。

 古典は当然、現代使われている言葉とは大きく異なります。中国古典の場合は漢文の知識が無ければさっぱり意味が分かりません。日本語でも草書は崩し方が多彩ですし、くずし字は似たような字が多いので解読するのがとても難しいです。初心者が何も参照にせずに解読するのはほぼ不可能ですので、手元に辞典や参考書などを用意しておきましょう。同時に、漢詩や和歌の基本的なルールも頭に入れておきましょう。

意臨では…

 意臨の場合、この時に作者の生い立ちや作品が書かれた背景・状況について調べておくとよいでしょう。書に込められた作者の精神を読み解くには、作品のことをよく知ることが一番です。

書く

 実際に筆を取って書きます。この時、ただ何も考えずに点と線を書き写すということだけは絶対にやめましょう。自分の目的に合った書き方をしましょう。形臨の場合はただぼんやりと筆を動かすのではなく、どのように書けばお手本通りの字になるのかを体感してください

意臨・背臨では…

 意臨の場合:作者が何を思って書いたのか、作者の気持ちなどを汲み取るよう意識します。意臨で大事なのはあくまで書に込められている思いであり精神です。自己主張が強すぎる作品となってしまったら意臨ではありません。

 背臨の場合:お手本を伏せて、記憶をたどって書くことになります。お手本を忠実に再現しようとするよりは、むしろ自分ならこのように書くという意識を持って書きます

臨書をする際の心構え

 臨書は表現方法に縛られたり、型にはまってしまったりとどこか怖いイメージを持って少し倦厭している方も多いのではないでしょうか。むしろ全く逆です。それどころか、100%お手本通りに書くということはそもそも不可能です。うまく書けなくても心配しないでください。大事なのはお手本に似せよう、少しでも古典に近づこうとする姿勢です。臨書を重ねていくうちにきっと身についていきます。

 臨書は根気のいる練習方法ですが、必ず上達するので挫折することなくコツコツと続けていきましょう。

臨書する時におすすめの古典作品

 古典作品は種類が豊富なため、基本的にはご自身がいいなと思った古典を用いて臨書することが望ましいですが、今回はいくつかの人気のある古典をご紹介します。

『「作品名」作者名』という風に表記されています。

   

楷書

  • 「九成宮醴泉銘」(きゅうせいきゅうれいせんのめい) 欧陽詢(おうよう じゅん)
  • 「孔子廟堂碑」(こうしびょうどうのひ) 虞世南(ぐせいなん)
  • 「雁塔聖教序」(がんとうしょうぎょうじょ) 褚遂良(ちょ すいりょう)

とくに欧陽詢の古典は、シンプルでわかりやすい楷書の古典のため書道初心者の方にもおすすめできます。

 

行書

  • 「蘭亭序」(らんていじょ) 王羲之(おうぎし)
  • 「祭姪文稿」(さいてつぶんこう) 顔真卿(がん しんけい)
  • 「風信帖」(ふうしんじょう) 空海(くうかい)
   

草書

  • 「自叙帖」(じじょじょう) 懐素(かいそ)
  • 「十七帖」(じゅうしちじょう) 王羲之(おうぎし)
  • 「書譜」(しょふ) 孫過庭(そん かてい)
  • 「真草千字文」(しんそうせんじもん) 智永(ちえい)
   

隷書

 

隷書の中でも、書道で最もよく見られる「八分隷」の古典を紹介します。

  • 「曹全碑」(そうぜんひ) (筆者不明)
  • 「礼器碑」(れいきのひ) (筆者不明)
  • 「乙瑛碑」(いつえいひ) (筆者不明)
   

篆書

  • 「泰山刻石」(たいざんこくせき) 李斯(りし) 小篆書
  • 「石鼓文」(せっこぶん) (筆者不明) 大篆書
 

以上になります。今回ご紹介させていただいた古典作品以外にも素敵なものが多数ございますので、ご自身のお気に入りを見つけてください。