所属する書道団体は流派より会派で選ぼう!

目次

流派・会派とは

 書道にも茶道や華道のように「○○流」や「○○派」という流派や会派が存在します。

流派とは

 書道が広まる過程で、それぞれが独自のスタイルを継承していき「流派」と呼ばれるようになりました。

 現在では数千もの流派が存在しているため、流派ごとの大きな違いがなくなってきています。そのため書道スタイルを流派で区別することが難しくなっているのが実情です。

会派とは

 会派とは、書く文字や特徴が異なる派閥のことを指します。その特徴も様々で、

  • 漢字を書く「漢字会派」
  • ひらがなを書く「かな会派」
  • 落款印で用いられている篆書という書体で書く「篆刻会派」

 などがあります。

 また、

  • 芸術的センスを求める「芸術系会派」
  • バランスよく美しい字を学ぶ「教育系会派」

 という分け方をすることもあります。

 作品に明確な特徴が現れるため、自分の求める書道スタイルを決めるには流派よりも会派を優先することが一般的です。

選び方~流派より会派で選ぼう!~

 書道をはじめる時には「流派」よりも、作品の特徴で区別される「会派」で選ぶのが一般的です。では、どうやってその会派を選べば良いのでしょうか?

 将来的に好きな書道を仕事にしたい人は、理想とするスタイルから会派を探すのがおすすめです。

書道教室の先生になりたい場合は教育系会派

 書道教室では子どもから大人まで調和のとれた美しい字を習得する目的の生徒さんがほとんどです。教育系会派で師範の資格を掲げることで書道教室の生徒さんを集めやすくなります。

 また、師範習得と同時に教室開設のバックアップを行っている会派もあります。

書道によるアート作家になりたい場合は芸術系会派

 自分の作品を販売したい、名前入りの詩作品を作る作家などで活躍をしたいという場合は芸術系会派がおすすめです。

 近年、贈り物として名前入りの詩作品が流行していますが、芸術系会派に所属し、展覧会での受賞歴などがあれば他の作家との差別化ができます。

書道の主な会派

漢字会派

 漢字会派は、名前の通り「漢字を書く会派」のことです。漢字のみを学ぶところもあれば、かな交じりの近代詩文書を学ぶところもあり、会派によってそれぞれ特徴があります。

 漢字会派には以下の会派があります。

クリックでHPに移動。

かな会派

 かな会派は、「ひらがなを書く会派」のことです。

 かな会派には以下の会派があります。

クリックでHPに移動。

篆刻会派

 篆刻会派は、書作品の完成を示す「落款」に使われている「篆書」という書体を書く会派です。

 篆刻会派には「日本篆刻協会」があります。日本篆刻協会は、日本で唯一"篆刻のみ"の全国公募展を開催している篆刻団体です。

 篆書は5つの書体(楷書・行書・草書・隷書・篆書)の中で最も古い書体であり、独特な字形をしているため、なかなか学ぶ機会が少なく書道上級者さん向けの書体となります。

 そんな篆書を用いた篆刻を学べる会派はとても貴重な会派といえます。

芸術系会派

 芸術系会派は、型にハマったきれいな字を書くことよりも、自由な発想で作品を作り上げる、まさに“アートな書道”が特徴的な会派です。

 お手本通りに書くよりも見る人を魅了する「引き」のある作品が尊ばれ、進級や師範制度よりも公募で行われる書道展での受賞歴が重要となります。

 「漢字」と「かな」が交じり合った“近代詩文書” の要素が強い会派をご希望の方には「芸術系会派」がおすすめです。

 芸術系会派には以下の会派があります。

教育系会派

 教育系会派は、誰が見ても美しいと思えるバランスの取れた文字を追及する会派で、日常生活で使う漢字とひらがなをキレイに書くための書道と言えます。

 進級、昇段、師範習得という目標意識を持って意欲的に書道に取り組めるのも、教育系会派の持ち味のひとつです。

 教育系会派には以下の会派があります。

書道で有名な流派

最も古い流派「世尊寺流(せそんじりゅう)」

 世尊寺流は数多くある流派の中で最も古い流派と言われており、三蹟の一人である藤原行成を祖とする和様書道の流派です。

 宮廷や貴族の間で最も権威ある書法として受け継がれていきましたが、16世紀頃(室町時代)に断絶してしまいました。

世尊寺流から分化、発展した「尊円流(そんえんりゅう)」

 尊円流は世尊寺流が発展した流派であり、別名、「御家流(おいえりゅう)」「青蓮院流(しょうれんいんりゅう)」「粟田流(あわたりゅう)」とも言います。

 鎌倉時代に立ち上げられ流派で、江戸時代になると世間に広まり「御家流」と呼ばれるようになりました。

 尊円流から派生した流派に「尊朝流(そんちょうりゅう)」や「有栖川流(ありすがわりゅう)」などがあります。

皇室で受け継がれる「有栖川流(ありすがわりゅう)」

 有栖川流は尊円流から派生したもので、代々皇室で受け継がれている流派になります。

 現在は秋篠宮文仁親王(あきしののみやふみひとしんのう)、正仁親王妃である華子様によって継承されています。皇室の方と同じ流派の書道を習っていると言うと少し高貴な気持ちになれそうですね。

竹の根の筆を使用する「竹峰流(ちくほうりゅう)」

 1980年頃に誕生した流派で、竹峰流の書道の大きな特徴は竹の根の筆を使用していることです。

 摩耗が少なく長く使えること、独特な風合いの作品が出来上がるのが魅力のひとつ。竹には節もあり一見扱いにくそうですが、書道を楽しむきっかけになりそうですね。

 特徴的な一部の流派を紹介しましたが、無数の流派が存在し、衰退した歴史があります。伝統芸能の伝承にある歴史的背景に思いを馳せるのも書道の楽しみ方のひとつかもしれませんね。

まとめ

 書道の「流派」「会派」についてご説明しました。

 曖昧だった流派や会派について少し理解を深めたら、後は自分が「こんな字を書けるようになりたい!」と思える会派を選ぶのが最善です。

 目標にできる指導者のもとで、楽しんで書道を続けられることが上達の一番の近道と言えるでしょう。