その他ちょっと変わった筆

目次
鶏毛筆と絵画用の筆

様々なものから作られる筆

 これまでウマや山羊、タヌキといった動物の毛を使った筆を紹介しましたが、他にも鳥や植物などから作られた珍しい筆もあります。いずれの筆も書きやすさよりも、見栄えや独特な筆跡を楽しむために使われているようです。その中からいくつかの筆を紹介します。

 どの筆もクセが強く、使いこなすのが難しい筆ばかりですが、興味のある方はぜひ使ってみてください。どれも珍しい筆なので一般的な筆と比べると少し値が張ります。購入を検討する際には十分ご注意ください。

様々な珍しい筆の原料と特徴
孔雀 水をよく弾くため、墨の含みが悪い。羽の一本一本が太く、一般的な筆では書けないような字を書ける。見た目が綺麗なので観賞用にも良い。
軍鶏 なかなかワイルドな字を書ける。太筆用。
毛先が柔らかく、ふわふわとしていてかわいい。見た目とは裏腹にまとまりにくい。力加減で豊かな表現ができる。
ダチョウ 特大の筆。豪快な字が書ける。筆の見た目がインパクト大。
マングース イタチやタヌキに比べると硬くて荒い。触るとツンツンしてちょっと痛そうな見た目をしている。独創的な字が書ける。とても希少。
竹の繊維をそのまま筆にしたもの。硬いので使う前に水につけて繊維をふやかす必要がある。墨の含みは抜群。まとまりにくく、かすれた荒々しい字が書ける。
穂先のまとまりが悪く、書いている途中で筆が割れておどろおどろしい字が書ける。軸の部分も藁でできていて、見た目もちょっと怖い。
人間(胎毛筆) 人間の赤ちゃんの髪の毛から作られる筆。生まれてから一度も切ったことのない髪の毛(胎毛)でしか作れないとても貴重な筆。実用用としてよりも観賞用に作る方がほとんど。

筆ペンについて

 筆ペンとは、ペン先を筆のように加工したペンのことを指します。力の強弱によって字の太さや趣を変えることができ、インクを使用するペンでありながら毛筆で書いたような字を書くことができます。ご祝儀袋や年賀状などで書く際によく用いられると思います。

 毛筆との大きな違いは、墨の有無です。筆ペンは軸の部分にインクが内蔵されています。書く度に墨を付ける必要がなく、すらすらと流れるように字を書くことができます

 また主に動物の毛から作られる筆とは違って、筆ペンはナイロンやポリエステルといった化学繊維を用いて作られています。毛先に弾力があり穂先が戻りやすく、何度も筆を整える必要がありません。当然ですが筆と同様に筆ペンもいい加減に扱えば寿命が縮まりますし、筆が割れ、毛先が潰れてしまうことがあります。

 近年では本物の筆と大差ない筆文字を書くことができる筆ペンも登場しているようですが、やはり書き心地はかなり異なります。筆ペンは筆ペンとして、毛筆とは全くの別物として考えましょう。筆や墨、硯などを用意しなくても、手軽に味のある文字を書くことができるという点が筆ペンの最大の利点です。筆文字を学びたいけれど道具を揃えるのが難しいという方や、鉛筆やペンで書く字では物足りないという方はぜひ筆ペンを使用してみてください。

 なお、ペンや鉛筆といった毛筆以外の筆記用具のことを硬筆と言います。これについては「硬筆と毛筆の違い」や「筆記具による違い」の記事で説明します。

絵画用の筆を使ってもいいの?

 絵画用の筆を書道に使用していいのか、あるいは書道用の筆を絵画に使用していいのかという話をよく聞きます。結論から言いますと、書道をするなら書道用の筆を使うことが望ましいです。なぜなら、書道用の筆と絵画用の筆では作りが全く異なるからです。

 書道用筆は字を書くために作られているので、穂先が鋭く尖っています。対して絵画用の筆は線を引くというよりも主に絵の具を広く塗るために作られているので、穂先が丸みを帯びています。書道用の筆は書道に、絵画用の筆は絵画に、それぞれ最適な作りとなっています。適していない用途で使おうとすれば筆が割れたり、毛が抜けたりと筆を痛めてしまう原因となります

 だからといって、決して使えないというわけではありません。絵画用の筆にしか出せない味というものがありますし、書道用の筆にしか出せない味もあります。あえて絵画用の筆を用いての書道に挑戦することで何か新たな発見があるかもしれません。

 ただし、筆の制作過程で想定されていない使用方法ですので、筆の寿命が短くなる恐れがあるということを常に念頭に置きましょう。

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