ぞうほう 蔵鋒

 蔵鋒ぞうほうとは、起筆の技法の一種で、穂先を逆の方向から入れて線の内側に包み込むようにして書く。⇔露鋒

 例えば横画では右から左、縦画では下から上に筆を入れることで穂先が線の中に隠れて蔵鋒になる。蔵筆で書かれた字には穂先の形が表れず、丸味を帯びたような線になる。ずっしりとしていて重い印象を与えることができる。蔵鋒のまま送筆に移ると筆の穂先は線の真ん中を通るようになり、この技法を中鋒という。主に篆書隷書に見られる技法。

 虞世南の『孔子廟堂碑』には蔵鋒の技法が使われており、欧陽詢の『九成宮醴泉銘』には蔵鋒と露鋒の両方の使用が見られる。