ぼくじゅう 墨汁

 墨汁ぼくじゅうとは、固形状の墨を硯で磨ることで液体状になった墨のこと。あるいは液体の状態で市販されている墨のこと。ここでは後者の墨汁について説明する。

 墨汁が誕生したのは明治20年ごろであり、それまでは使用するたびに固形墨を磨っていた。墨汁には固形墨のような天然素材を使用した煤ではなく、カーボンを用いているものや、膠の代わりに防腐剤として大量の塩や合成樹脂を用いているものがある。そのため固形墨に比べて腐敗しにくく、長期の保存が可能であるといった長所がある。しかし、同時に色の濃さの調節が難しく、固形墨のような深みのある色を出すことができないという短所もある。