隷書(隷書)について

概要

 隷書という書体をご存知でしょうか。聞いたことがない方がほとんどだとは思いますが、現代でも意外なところで隷書を見ることができます。例えば、日本の紙幣に書かれている「日本銀行券」や「壱万円」といった文字は隷書で書かれています。独特な字ですが探せば案外身の回りに転がっています。ここでは、そんな隷書について紹介します。

目次
隷書

隷書(隷書)とは

 隷書とは、篆書に次いで二番目に古代中国で正書となった書体です。それまで標準書体とされていた小篆(篆書の一種で始皇帝が統一)は画数が多く、書くのがとても大変でした。そこで、小篆を簡素化して直線的に構成したことで生まれたのがこの隷書です。隷書は漢の時代になると最盛期を迎えました。

 隷書というと一般的には楷書に最も近い八分隷(はっぷん・はつぷんれい)を指します。このほかにも篆書から隷書に移る過程で使われた古隷(これい)や草書のもととなった草隷(そうれい)などがあり、同じ隷書でも雰囲気はかなり違ってきます。

隷書の特徴

 隷書の中でも、書道で最もよく見られる八分隷の特徴を紹介します。

字形が扁平で角張っている

 見たままに字が平べったいです。これは、記録媒体に木簡や竹筒を使用していたためだと考えられています。

 隷書は点画を角張らせて書きます。この書き方を方筆(ほうひつ)といいます。

起筆が逆筆、蔵鋒で筆の運びは中鋒

 書き始めで逆筆蔵鋒の形をとり、筆の穂先が線の真ん中を通るように筆を動かします。(中鋒)そのため穂先が線の中に隠れ、起筆と収筆の部分が丸くなります。

運筆は起筆、送筆、収筆とも一定の速さで書く

 一定の速さで書くことで線に強弱がなくなります

横画は水平で縦画が垂直、原則左右対称

 横画は楷書のように右上がりになりません。基本的に水平ですが、まれにドーム状に膨らんでいるものもあります。また、横画や縦画が連なっているときは、線と線の間は等間隔です。線の両端から字の中心線までの長さが同じです。

左右のはらいが波立つ、波磔がある

 横画の収筆部分や、左右のはらいの部分が三角形状になっています。これを波磔(はたく)といいます。原則として一字の中で一つの画でしか波磔は書きません

転折は別画として書く

 口の二画目や見の二画目のような折れの部分を楷書では一画で書きますが、隷書では別々の画として書きます。(筆を紙から離すかどうかは不明)

 その他の隷書の特徴についても簡単に説明します。隷書は一目見ただけでも隷書だと分かるような特徴を持っています。様々な古典を読んでみて、その隷書がどの時代の物かを考えながら書いていくと面白いです。

  • 秦隷……篆書を簡潔に表したもの。ほぼ篆書
  • 古隷……波磔が小さいか見られない。篆書の早書きから生まれたもので、篆書に近い形
  • 草隷……八分隷を崩したもの。さらに崩すと章草(しょうそう)になる

書く時のポイント

 ポイントは、隷書の一番の見どころである波磔です。難しそうですが、書き方は右払いとほぼ同じです。右払いと異なる点は、払った部分が右上がりになるという点です。収筆部分が三角形になるよう意識すると書きやすいと思います。ですが、横画の場合は横画の部分より上に出ないようにしましょう。(写真で説明)

 はらいでは楷書や行書と同じように払うのではなく、収筆の部分で軽くとめる(戻す)つもりで書いて丸みを持たせます。

 波磔が苦手な方は、一枚の紙の上に波磔の入った画を何度も何度も繰り返し書いて身に着けてください。波磔が書けるだけで隷書らしさが増します。とにかく実践あるのみです。様々な字を書いて隷書に慣れていきましょう。

臨書におすすめの古典

  • 筆者不明「曹全碑」(そうぜんひ)八分隷
  • 筆者不明「礼器碑」(れいきひ)八分隷
  • 筆者不明「乙瑛碑」(いつえいひ)八分隷