書の鑑賞の方法

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書作品の鑑賞の方法

 美術館や公募展に書の作品を見に行ったものの、どうやって鑑賞すればいいか分からない!ということでお困りの方は多いはずです。もちろん純粋に「美しい」や「綺麗だ」と思うことも鑑賞には含まれます。しかし、書道を極めたいと考えている方なら、ただぼんやりと作品を見ているだけでは非常に勿体ないです。そこで書の鑑賞をする際に、どのような点に注目すればいいのかを紹介します。

全体を見る

 まずは全体をパッと見て作品からどんな印象を受けたのか、直感的に抱いた感想を大事にしましょう。「豪快な字だ」、「ミミズみたいな字だなぁ」というように大雑把なもので構いません。

 また、明らかに偏と旁のバランスがおかしい、最後の文字だけ異様に大きい、といったような作品の特徴を掴み、なぜそのように書かれたのかに興味を持ってください。

意味を確認する

 次に、作品に書かれている文字を読みましょう。楷書や隷書なら簡単ですが、篆書や崩しが大きい草書は何が書かれているのかよく分からない場合があります。その場合は近くに活字で作品の詳細(タイトル)が記されてあることがほとんどなので、この字はこのように書かれているんだと納得しながら読みましょう。

 堅苦しいことは考えず、書を楽しみたい方はここまでで十分です。しかし、より高みを目指す方はもう少し踏み込んでみましょう。

作者を確認する

 どんな言葉が書かれているかが分かったら、次は誰が書いたのかを明らかにします。現代の作家である場合はその人が所属している流派や書道団体がどこかを確認しましょう。

 作者が古人である場合は、作者の生い立ちや作品が書かれた時代を踏まえて作品を見ましょう。案外書かれた時代によって趣は180度異なるものです。とはいえ、時代背景を踏まえるためには歴史に関する知識が必要です。とりあえず作者がだいたいどの時代に生きていたのかを頭に入れておきましょう。鑑賞が終わってからでも構わないので作者がどのような環境下で作品を書いたのかを想像しましょう。

細部までじっくり眺める

 今度は細部までじっくり眺めてみましょう。さらに、なぜこのように書かれているのかを考えながら点画を追っていきましょう。先ほど全体を見たときに掴んだ特徴が作者の意図的なものであるか、それとも無意識な筆の運びによるものなのか等を見極めることができるかもしれません。鑑賞眼がかなり鍛えられていないとなかなか難しいですが、ここまでできるようになると書の隠された味わいが分かるようになり、より鑑賞が楽しくなってきます。

心の中でなぞってみる

 作者がどのような思いで書いたのかを想像しながら、心の中で作品をなぞってみましょう。作者が書いた筆順に従って、一画一画丁寧になぞっていきます。

 また、自分ならどのように書くか想像しながら書いてもいいでしょう。(もちろん作品には手を触れないでください!)

最後にこれまでの感想を踏まえてもう一度鑑賞する

 第一印象、作者の生い立ちや時代、そして書きぶりを踏まえてもう一度作品を見ます。きっと、最初に見たときには抱かなかった感情が芽生えるはずです。

 この鑑賞方法はあくまで一例です。この順番に必ず従う必要はありませんし、これ以外にも気になる点があったら注意深く見ても構いません。そもそも、ルールや正解が無いという点が鑑賞のいいところです。

 書の鑑賞では、造形的な美しさの他にも作者の心や作者の時代等の諸事情も踏まえて相対的に見るようにしてみましょう。多くの作品を目にすることで、自分では気が付かなかった部分にも気づくことができるようになり、もっと書道が楽しくなります。そして、鑑賞で学んだことを自分の書に生かしましょう。