草書(草書)について

概要

 日本語の筆記体のような書体である草書体は、書くことはもちろん、読み解くことがとても難しい書体です。日常生活でも老舗飲食店の看板や商品のデザインに使われているのを見るくらいで、草書に触れる機会はなかなかありません。だからこそ、書道で草書を書くことに意義があるのではないでしょうか。

目次
草書

草書(草書)とは

 草書(そうしょ)は漢の時代に隷書や篆書から発生した書体です。草書は隷書を早書きする過程で生まれたと考えられています。早く書くことを目的としていたので、可能な限り点画を省略しています。走り書きや筆記体のようなものだと考えると分かりやすいと思います。

 草書の中には楷書の面影が全く無いような字まであります。草書の研究でも、時々似た漢字に誤読してしまうことがあるようです。一般の方が学校教育で得た知識だけだと読み解くことは困難です。

 以上の点から草書は実用的な字ではないため、日常生活で目にすることはほとんどありません。現代の中国で使われている簡体字の多くは草書を参考に作られたようですが、日本では公的な場で使われることはほとんどありません。

草書の特徴

 速筆向きである草書は、早く書くことができるように点画の至るところで省略が行われています。この省略は決していい加減に省略されていのではなく、文字ごとにきちんと決まっています。そのため形を覚えていなければ草書を読むこともできませんし、書くこともできません。さらに、同じ字でも書き方や崩し方が大きく違うものありますし、古典では書き手によって崩し方が変わることがあります。

 また、楷書が三折法であったのに対し、草書は「トン・スー」あるいは「スー・グー」の二折法です。そのため字も自然に丸みを帯びた柔らかい印象を与えます。この点からも草書は作者の情緒が自然に現れる書体であると考えられています。草書は楷書に比べて表現に自由が利きます。はっきり言って自分の好きな風に書いて良いのです。とはいえ、古典を学んで草書の基礎はしっかりと身につけた方が楽しさは増えます。

書く時のポイント

 まずは、書こうと思っている字が草書だとどのように書かれるのかを覚えましょう。その際には崩し方などが詳しく解説されている書道辞典を参照してください。中には似たような形をしたものもあるのでしっかりと区別して覚えましょう。

 ある程度崩し方のパターンを覚えたら、実際に書いてみましょう。必ず草書のお手本を手に入れて、お手本を見ながら書いてください。大切なのは、流れるように書くことです。そのためには書こうとしている字の筆順をきちんと把握していることが非常に重要になります

 また、流動的に書くには筆を柔らかく動かす必要があります。何度も繰り返し練習することで草書独特の線の質を身に着けるしかありません。書きにくいと感じた方は筆を羊毛筆や兼毛筆などの柔らかめの物を用いると良いかもしれません。

臨書におすすめの古典

  • 「自叙帖」(じじょじょう)懐素(かいそ)
  • 「十七帖」(じゅうしちじょう)王羲之(おうぎし)
  • 「真草千字文」(しんそうせんじもん)智永(ちえい)
「自叙帖」懐素
「自叙帖」(部分) 懐素 大暦12年(777年)
「十七帖」王羲之
「十七帖」王羲之(303-361)
「真草千字文」智永
「真草千字文」智永