和墨・唐墨による違い

概要

 墨は中国で生まれたものであるということはご存知ですか。現在日本で使われている墨のほとんどは日本で作られていますが、中国製の墨と日本製の墨とでは性質が少し異なります。ここでは日本製の墨と中国製の墨の違いを紹介します。

和墨と唐墨

和墨と唐墨の違い

 使用されている煤によって三種類の墨がありますが、さらに唐墨からすみ/とうぼく和墨わぼくの二種類に分けることができます。中国製のものを唐墨、日本製のものを和墨といいます。古来中国で作られていた唐墨が日本に渡った際に、日本の気候や土地に合わせて製造方法を変えた結果生まれたものが和墨であると考えられています。

 和墨と唐墨の最も大きな違いは墨に含まれている膠の量ですが、その他にも以下のような違いがあるといわれます。

唐墨と和墨の比較
墨の種類 膠の割合と粘度 色の特徴 滲みやすさ 墨の硬度 墨の寿命 書くのに適した文字
唐墨 割合は高くて低分子のため粘度は低い 深みのある色 滲みやすい 硬い 長い 漢字
和墨 割合は低くて高分子のため粘度は高い 黒味が強い 滲みにくい 柔らかい 短い かな文字

上には書くのに適した文字とありますが、唐墨でかな文字を書いたり和墨で漢字を書いたりしても問題はほとんどありません。

どちらの墨を用いるべきか

 唐墨は中国の気候に合わせて作られた墨であるためか、日本だと気候や湿度の違いが原因で割れやすい、ヒビが入りやすいという問題が出てくることがあります。その点を踏まえると和墨の方が良いと言えますが、唐墨の方が圧倒的に長持ちします。唐墨は質の良いものだと100年ほど持ちます。一方で和墨は長くても約50年です。

 どちらの墨の方が良いか神経質になる必要はありません。それぞれの墨の特徴を理解して好きな墨を使いましょう。