楷書について

概要

 楷書はほとんどの人が見慣れた書体であると同時に、習字の基本を学ぶ上で欠かすことのできない書体です。楷書で学んだことは草書や行書を学ぶ上で非常に役に立ちます。楷書の特徴や書く時のポイントなどを紹介します。

目次
楷書

楷書とは

 楷書(かいしょ)は書の基本であり、書道を極める上では最初に学ぶべき書体です。楷書は隷書を簡単にした書体であり、隷書から派生した書体の中で最後に誕生しました。楷書は3世紀中ごろの中国で誕生し、7世紀の唐の時代に完成されたと考えられています。

 楷書は点画が明瞭で筆法も難しくなかったことから、中国で正式な書体とされた期間が最も長い書体です。そのため、一般的には正書という言葉は楷書のことを指します。

 日本人が日常生活で最も目にする書体がおそらくこの楷書体ではないでしょうか。学校教育において最初に学ぶ書体もこの楷書です。ですので、書道を学ぶ際もまずは楷書から始めましょう。

楷書の特徴

 楷書の特徴は一画一画を続けずに、紙から筆を離して書くことです。言うならば、点画を省略したり、字形を崩したりはしません。そのため草書でまれに起こりうる似ている漢字を読み違えてしまう、なんてことはまず起こりません。

 楷書には「始筆(起筆)、送筆、終筆(収筆)」の三折法がはっきりと表れています。一画一画決められた筆順に従ってきちんと書くことも相まって、かっちりとした印象を持つ人が多いのではないでしょうか。実際に今日も公の書類に記入する際は楷書で書くことを求められます。

 また、楷書で書かれた古典をよく見てみると、横画がわずかに右上がりになっているのが見て取れると思います。この点も楷書の特徴です。

書く時のポイント

 一点一画どこも繋げることなく、筆順通りに書いていけば完成します。三折法さえ意識すれば特に難しい技術は必要ありません。横画はやや右斜め上の方へ傾けるとより綺麗になります。

 また、極端に字を変えて書くことはありません(書き方、書き順は一通りです)。ということは、裏を返せば行書や草書に比べると自由に書くことが難しいです。

 楷書は最も身近な書体であるゆえに、比較的とっつきやすい書体ではないでしょうか。初心者はまず楷書を通して書道の基本を身につけましょう。

臨書におすすめの古典

  • 「雁塔聖教序」(がんとうしょうぎょうじょ)褚遂良(ちょ すいりょう)
  • 「九成宮醴泉銘」(きゅうせいきゅうれいせんのめい)欧陽詢(おうよう じゅん)
  • 「孔子廟堂碑」(こうしびょうどうのひ)虞世南(ぐせいなん)
「雁塔聖教序」褚遂良
「雁塔聖教序」褚遂良(596-658)
「九成宮醴泉銘」欧陽詢
「九成宮醴泉銘」欧陽詢 貞観6年(632年)